10000回転カッター
2019.03.12更新
『最新が最高』とのフィロソフィーを実感した出来事があった。
ある日、巨大裂孔網膜剥離の患者様…網膜変性巣が裂けたことが原因の丈の高い網膜剥離の手術を依頼された。他の部位(下方)にも変性巣があり硝子体との癒着が強そう。難しい…。直感が働いた。
救いは上方の裂孔であること。黄斑剥離が起きていないこと。術後に体位制限が必要だが、座位でも治る。厳密でなくても良い。
いつもの7500回転カッターから10000回転カッターを選択した。(当院は全例で25Gシステムを使用している。)
結果として…この選択が功を奏した。原因裂孔が網膜変性巣だから当然硝子体牽引と癒着が強い。10000回転カッターは、剥離している網膜直近まで近づけても網膜の挙動が安定している。はためかない。変な合併症を引き起こさずに思い通りに硝子体を処理できる。ストレスが少ない。
裂孔が大きいので、架橋静脈が存在した。網膜挙動が不安定だと…誤って傷つけ出血する事もある。たぶん、普通に7500回転だと出血していたと思う。
下方の変性巣も慎重に処理したが新たに裂孔を作ることも無かくガス置換を行えた。下に穴があくとさらに厄介になる。
難しいケースであったが、いつもより短時間でかつ安全に手術を完遂することが出来た。
今後パッカーの発症には注意が必要となるが、『最新こそ最高』を身をもって体験した出来事であった。
その後…stage4の黄斑円孔の予定手術時に剥離を併発していた患者様の手術にも10000回転カッターを途中から使用し無事に終了できた。それでも他の場所に3ケ所も医原性裂孔が生じたことを考えると…ゾッとする。全例で10000回転カッターを使用する必要は無いが…網膜の状態によっては上手く7500回転カッターと使い分ける必要があるし、手元にストックしておくことで、技量が同じでも、もう一段階クオリティーの高い手術も提供できると確信した。
温故知新の心を大切にしながらも、機械の進歩には…いつも驚嘆しかない。
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