職人
2017.12.11更新
先日、東京の某有名鮨屋でランチを食べる機会を得た。世界に誇る日本の江戸前鮨。予約しないでも、運良く最後の2枠に滑り込めた形だ。
定刻から7名枠限定(カウンターのみ)で、ランチがスタート。それまでは、テーブル席で待たされていて、いよいよでカウンター席へ誘導される。準備の段階で、お弟子さん達を叱る雰囲気や大将が醸し出す緊張感が半端ない…。
カウンターに座ると、まずは簡単な好みや苦手な食材や食べれない食材がないか…大将自らがヒヤリング。幸い好き嫌いのない我々は『全て大丈夫です。お任せで…』お酒も飲みたかったが、ランチタイムだったのと純粋に握り鮨を堪能したかったから自重した。
私のお隣さんは、常連さんらしく…『大将いつもの』の一声で、お酒と供にお刺身から供されていた。日本酒に合いそうな肴が次々と…。美味しそう。
他は、東南アジアの外国人達。観光ついでにガイドブックを見て、この店に来たようだ。随所にカウンター越しに英語が飛び交う。ネタの説明など大将も自ら英語で…。生粋の鮨職人でも日常的な英会話ぐらいは必須な時代。激務の中、大将は英会話スクールに通ったのかな?独学?なんて想像する。笑。
何故か?一貫目のネタがどうしても思い出せない…。高級鮨屋の雰囲気に飲み込まれていた?どこに行っても割りと緊張しないタイプなんだけど…。
握り鮨を供された瞬間に、間髪入れずに口に放り込む。舌にしか味覚が無いので…口に入れる直前でネタが舌側になるよう反転させて食す。美味い…。ネタはさることながら、シャリとのバランスが絶妙。
次々と至高の握り鮨が供されていく中…今でも記憶に残っているのが…アジとコハダ。
アジ…鯵。今まで食べてきた鯵とは別物と思うほどの一品。感動のピーク。我々が顔を見合わせて驚嘆しているその反応を見逃さずに…大将が、鯵は一番美味しい魚なんですと教えてくれた。名は体を表していて…漢字で魚へんに参る。あまりの美味しさに参ったということが漢字の成り立ちなんだと。
コハダはその店の技量が分かるネタだと聞いた事がある。酢締めや塩加減。小骨処理したり仕事が繊細。江戸前鮨では避けて通れない王道ネタ。実はコハダは…唯一あまり得意じゃないネタ。でも食してみると…こんなに旨味の強い魚だったの?とコハダの良さが引き出された握りとなっていた。
他に、エビも絶品。軽くスモークされたカツオ、中トロも笑いが出るほど美味しかった。
最後に玉子焼き。砂糖や膨らし粉は一切使用していないとの事。なんでこんなに甘くてふっくらとしているのか?訳が分からない。
追加で、大トロとエンガワを注文して至福なランチタイムが終了。時間にして90分くらいか?
短い時間だったとはいえ、世界に認められた名店のこだわりやプライドを随所に感じた貴重な体験でした。また、大将が話してくれた仕事に対する考え方や厳しさは、今や失われかけてきた日本の…日本人本来の良さを強烈に放ちながら実直に努力してきた人間だけが出せる重みのある言葉達でした。一期一会…職種は違えど、参考になる話が多くお腹も心も感動でいっぱいとなりました。
特に印象に残っている言葉に…『もういつ辞めても良いぐらい全てを犠牲に働いてきた』鮨を握るその右手首はもうボロボロなんだと。そんな本物の職人に…私も成っていきたいと思いました。
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